健康診断や献血で、血が濃いとか、血がアプラっぽいとか、多血症とか言われたことはありませんか?
血が濃いというのは、血液中の赤血球が増えてしまう多血症という病気です。
赤血球は増えすぎると、血液の粘り気が増し(= いわゆる『血液ドロドロ状態』)、血管が詰まりやすくなることで動脈硬化や血栓などを起こしやすくなります。
目次
血液が濃いとは、どういうこと?
では、「血液が濃い」とはどういう事かと言うと、赤血球の数が多いということです。
赤血球の数が多く、赤血球の中のヘモグロビン濃度が高い人の血液ほど濃くなり、逆に赤血球の数が少なくヘモグロビン濃度の低い人の血液ほど薄いということになります。
この赤血球は全身に酸素を運ぶという大切な役割があるため、不足すると貧血になりますが、増えすぎても「多血症」という病気になります。
多血症とは
この「多血症」とは、血液中の赤血球が増えすぎた状態のことを言います。
何らかの原因で血液中の赤血球が増えてしまう病気で、「赤血球増加症」とも呼ばれます。
血液細胞の中にある遺伝子の異常で起こる「真性多血症」や喫煙や心臓・肺の病気の影響で起こる「二次性多血症」、「ストレス多血症」と呼ばれる原因不明のものもあります。
多血症の種類
この多血症には大きく分けて、次の2つがあります。
●絶対的多血症 ●相対的多血症 |
絶対的多血症
何らかの原因によって、以前より血液中の赤血球の数が多くなっている症状のことです。
絶対的多血症には、次のようなケースがあります。
・【 真性多血症 】・・・血液細胞の中にある遺伝子の異常で赤血球が増加 ・【 二次性多血症 】・・・他の病気が原因となり赤血球が増加 |
① 真性多血症(骨髄増殖性疾患)
血液細胞の中にある遺伝子の異常で起こる病気で骨髄の機能が異常に活発になって、赤血球を作る機能が暴走して過剰に赤血球を作ってしまいます。
赤血球の増加だけでなく白血球や血小板なども増加することから、骨髄の異常増殖性の病気と考えられています。
特に、中年の男性に多く、頭痛・めまい・顔のほてり・のぼせ感・耳鳴りなどの症状が見られます。
放っておくと、がんや感染症などを併発することもある恐ろしい病気です。
② 二次性多血症
高地居住者、タバコの吸いすぎ、慢性の肺の病気や先天性の心臓疾患などで酸素不足を起こすと、血液の量を調整するホルモンであるエリスロポエチンの濃度が上昇して起こります。
症状は真性多血症と同様ですが、原因となる病気によって、それぞれの病気の症状が加わってくるのが特徴です。
相対的多血症
下痢や嘔吐(おうと)などで大量の体液を失い、血液中の水分量も減ると、赤血球の数は変わらないのに、血液全体に占める赤血球の割合は高くなります。
この見かけ上の多血症の状態が、相対的多血症です。
下痢、やけど、発汗、嘔吐(おうと)などによるものと、下痢などの脱水の原因がないにもかかわらず水分が減り、相対的多血症を起こすものにストレス多血症と言われるものがあります。
下痢、熱傷、発汗、嘔吐などによるもの
体液が少なくなって、血液中の液体である血漿(けっしょう)が少なくなり赤血球の濃度が増した状態になるような見かけ上の多血症は、基本的に水分を補給すれば回復し、問題になることはまずありません。
ストレス性多血症
ストレス多血症は赤ら顔で、肥満、高血圧があり、喫煙をしている中年男性によく見られ、多くは飲酒歴もあります。
健康に良くない栄養バランスの悪い食生活、乱れた生活習慣により、水分量や身体の循環・代謝が悪くなり、ヘモグロビン濃度が上がるためだと考えられています。
精神的な緊張状態のストレスを受けると発症して、高脂血症、高尿酸血症などを合併する傾向にあります。
多血症の症状
多血症の症状としては、赤血球の増加が激しい場合には、頭痛、皮膚のかゆみ、視力障害、赤ら顔、結膜(けつまく)の充血、耳鳴り、ふらつき、めまい等が起こる事があります。
また、血栓が出来やすくなって心筋梗塞や脳梗塞に発展したり、高血圧、痛風、胃潰瘍、鼻血、内出血などの出血を伴うことが多くなります。
症状として出ない場合もあったり、症状があっても体質や他の病気のせいだと思ってしまう場合も多く、健康診断などでの血液検査の異常により発見される場合も多いです。
多血症の数値的な定義
男女別に、赤血球数、血色素量(Hbヘモグロビン)、Ht(ヘマトクリット)の値が、下記数値を超えると多血症と診断されます。
性別 | 赤血球数 | 血色素量・Hb(ヘモグロビン) | Ht(ヘマトクリット) |
男性 | 600万/μl | 18.5g/dl | 52% |
女性 | 550万/μl | 16.5g/dl | 48% |
多血症の治療法とは?
多血症の治療法は、それが真性多血症なのか二次性多血症なのか、ストレス性多血症なのかによって変わってきます。
真性多血症の場合
赤血球が正常値になるまで、瀉血(身体の外に血液を抜くこと)を繰り返します。
症状はこうした治療によって一時的には良くなりますが、治療をやめてしまうと元にもどってしまうので、化学療法として抗白血病薬を使用して骨髄の造血作用をおさえます。
二次性多血症の場合
血液の量を調整する『エリスロポエチン』というホルモンの分泌を促進している腫瘍(しゅよう)を摘出したり、もとになっている病気を治療することによって二次性多血症も治します。
ストレス性多血症の場合
小太りで、高血圧があり、神経質、高ストレス状態、喫煙者、生活習慣病などの症例を持っている中年男性に多く見られ、代謝の異常により起こります。
ストレスが原因の多血症なので、日常のストレスから解放されると、数値が改善されることが多いです。
治療として薬による治療は行われず、質の高い睡眠や安静をとることでストレスを減らすことが大切です。
ストレス以外にも栄養バランスの偏った肉類中心の食事や、過剰な塩分の摂りすぎやアルコールの飲み過ぎなど乱れた食習慣、喫煙の習慣がある場合が多いので、食生活の改善も重要です。
多血症の注意事項
多血症については、血液検査で行われるヘモグロビン値の基準値が一つの目安になります。
成人男性の場合18.5g/dL、成人女性の場合16.5g/dLを超える場合は、多血症の疑いがあります。専門医を受診しましょう。
また、そこまで行かなくても、数値に不安がある方は、日頃の生活習慣を見直してみて下さい。
禁煙やアルコール制限を行い、体重、高血圧、高脂血症などのコントロールも必要です。
多血症でヘモグロビンや血中の赤血球が多くなっているということは、血液ドロドロ状態で血液が濃く流れにくくなっているので、普段から水分摂取を心がけ、脱水症にならないように注意しましょう。
血液サラサラになるように食生活や生活習慣の改善、適度な運動などを行い、その上で定期的に検査を受け、改善されているかを確認することが大切です。
血液ドロドロから血液サラサラに
多血症でどうしても血液ドロドロになっていると、全身の血流が悪くなり、血液によって全身に酸素や栄養を巡らせることが出来ません。
血液ドロドロ状態だと、血管が詰まりやすくなり心筋梗塞、脳梗塞などの動脈硬化を引き起こす可能性も高くなるので、血液はサラサラにしておくべきです。
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